私は幼いころから特に夢などを持たず、何となく日々を過ごしていた。
高校進学のときは自宅から徒歩2分のそこそこの進学校を選択した。
中学では学級長や委員長を務め、そこそこ「いい子ちゃん」のカテゴリに居たこともあり、「とりあえず高校には行っとくかな」と思い高校へ進んだ。
進学校でなくてもよかったのだが、たまたま進んだのが近所の進学校だった。
受験に失敗したら働いてもいいかなと思っていた。
高校生活はクラスの人間となじめず、部室で麻雀ばかりしていた。
いずれ進路を考える時期を迎えるわけだが、周りの皆が「大学を目指す」というので、私も大学を目指すことにした。
将来やりたいこと?特になし。地元でまったり暮らせればいいや。
しかしこのとき、初めて選択をした。『理系か、それとも文系に進むか』である。
大学選定はまだ先のことなるが、クラスが進学コースと普通コースに分かれるのだ。さらには理系・文系でもクラスを分けるという。
将来なりたい職業が特に無かった私は、少しだけ悩んだ。
ふと頭を過ったのは、親友の酔っぱらい親父の発言だった。
「こいつ(親友のこと)は医者になりたいとか抜かしてるんだが、これからの時代はコンピュータだ」
世間では「IT革命」という言葉がチラホラ聞かれるようになってきたころのことだった。そのオヤジは私が親友の家に遊びに行くといつも酔っぱらっていたが、いろんな話をしてくれて中々面白いオヤジだった。
「IT?何それおいしいの?」
位のレベル感だった私だが、酔っ払いオヤジのなんかわからないけど説得力のある言葉と、「パソコン使えるってかっこいいな」という気持ちだけで理系に進むことを決めてしまった。なんかもう洋服選びと同じような感覚だったのだろうか。当時の自分に助言できるならば、進路はファッションじゃないんだぞと説教をしたい。
数学の苦手な理系が誕生した瞬間である。
(そもそもITが理系、というのも今の時代ちょっと無理があると思う。分野にもよるけど)
ちなみに、この時点でまだパソコンに一度も触ったことがない。
その後なんだかんだで運よく地元の国立大学に入学することができた。
結果的には、「なんとなくパソコンやっとくか」という殴りたくなるような判断が今の私の基本となっている。転職をすることもできたし、今ではいっちょ前にひとつの会社で社内SEをやっているのだ。
良いか悪いかは別として。
高校のときにもっと意識が高ければ、今の私はぜんぜん違う仕事していただろう。完全にここまで運で来ている。しかし、楽をしたがる性格と、人の役に立てると嬉しい、という性格は社内SEに向いていると思う。案外なるべくしてここまで来たのかもしれない。