ガシガレ

社内SEのヒトリゴトです。

2番目の職場の話⑤Force

「ガシくん、自転車あるけど使う?」

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もっと早く言えよ 自転車あるんですね!その情報、もっと早く知りたかったです!
お酒も進まず酔いもすっかり醒めていました。会社と自宅の距離は電車20分程度の距離なので、自転車で帰れないことはありません。いずれにしても一旦家に帰りたかったですし、有り難く借りることにしました。あたりは深夜になっていましたが、私は勢いよく自転車を漕ぎだしました。周囲はまだ混乱の様子が残っていました。

しかし私はあの大地震から生きて帰れることが嬉しくて、自転車を漕ぐのはちっとも辛くなかったです。よかった!生きてる!そう思いながら漕ぎ続けました。

 

何とか自宅に到着しテレビをつけると、画面には東北の生々しい惨状が映し出されました。津波で壊滅状態の街並み。大規模な火災、立ち上る噴煙…。なんじゃこりゃ…。帰るまで状況を確認できなかったのでこの時初めて東北で大参事が起きていることを知りました。一気に現実に引き戻されました。

 

この日からしばらくの間はとても憂鬱な日々が続きました。なんで私はあたたかい田舎を離れてこんなゴミみたいな都会に出てきてしまったんだろう。今すぐ実家に帰りたい。家族に会いたい。友人たちは元気だろうか。東北のことを考えるほどに、家族のありがたみを噛みしめました。私は今後どうなってしまうんだろう。つらい。会社は変な人ばかりだ。帰りたいよ。東京に出てきてから、初めて「現実」「将来」を生命レベルで考えさせられました。

 

・・・・・・・

 

ご存知の通り、都内もその後しばらく混乱が続きましたが、プロジェクトの方は何とか完遂。無事リリースをすることができました。よかった。私も多少は役に立てただろう。

 

気付けば年度も切り替わり、社長による社員たちの評価レビューが実施されました。タフなプロジェクトでしたが文字通り即戦力で一生懸命働きましたし、プロジェクトに穴も開けませんでした。むしろ他の休みがちな社員のバックアップもしましたし、多少は評価してくれてもいいんじゃないかなと思っていたところ

 

「ガシくん一回デグレ起こしたよね。残念だけど減給になるよ」

「」

 

私はミスった。確かにミスりました。あのときボコボコに怒られた記憶が蘇ってくる。しかし、私はこの評価にどうしても納得できませんでした。そもそも人的作業に偏ったリリース手順の問題点や当時の残業続きのプロジェクトの状況を無視している。その他の私が貢献した部分も一切無視している。この部分は賛否両論あるでしょう。でも私は納得できませんでした。

このあとまだ何かベラベラ喋っていた気がしますが、頭に入ってきていませんでした。

 

私は「わかりました」の一言を絞り出すので精一杯でした。

 

そしてその言葉とほぼ同時に、私の中に言葉では表せないエネルギーが湧き上がってきたのです。

ようやく目が覚めた。

社会のゴミめ。もはやこれ以上この会社にいる価値はない。

 

 (1196文字、52分)